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shunichiro0083のアイのダメヲタ日記-感想と推測と妄想の終わらない円舞曲

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2005年 09月 01日

ラクス・クラインのこと

・さて、「種運」も残す所あと五回になりましたが、物語の着地点は眼のいい人間にもおぼろげにしか見えてはいないのではないでしょうか。
 勿論、「物語」が予想通りに行かないのは当たり前ですが、予想すら出来ない展開というのもどうかと思ったりもします。
 ここでは「種運」終結の鍵を握るであろう最重要人物・ラクス嬢のことを、とりとめもなく考えてみたいと思います。





・さて、ラクス・クラインと言えば先の戦争終結の立役者と世間一般からは信じられている人物の一人です。
 こうした人物はまだいて、キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、カガリ・ユラ・アスハらがよく知られているようです。画面では散発的な戦闘をしていただけに見えますが、画面の外では連合・プラント間による戦争を終結させるべく様々な活動をしていた、ということになっています。
 C.E.世界では「一騎当千」とか「万夫不当」という言葉が絵空事ではなく現実としてありえる世界ですので、自由と正義の大活躍が戦争終結をもたらした、ということとなればそれらが第三勢力となるべく仕向けたラクスの功績もまた大、ということになるでしょう。
 
・まあ、ラクスに付きものなのは広大無辺な現実世界を見通す千里眼の如き観察力と、その行く末を正確に看破する洞察力です。それによって彼女はキラこそ戦争を終結させる重要な因子であることを見抜き、ザフトの最新鋭MSたるZGMF-X10A・自由を渡します。
 とは言え、それ以外の彼女の行動というのはまあ定石通りと言えば定石通りです。コーディネイターとナチュラルの戦争に反対し、己の軽率な行為が原因とは言え体制派から追われる身となってからは地下に潜伏し、戦争終結に向けて様々な努力をしていたようです。
 その後、エターナルを強奪したラクスはオーブを脱出したアークエンジェル・クサナギと合流。以後、ラクスを中心とした3隻はオーブ残党、プラント内のクライン派、連合の和平派等と連絡を取りつつ、戦争の早期終結の為の働きかけを行ったのは前述の通り。
 こうした活動の結果、停戦後民衆からラクスらは英雄視されることなります。特にプラントの歌姫としてコーディネイターからの人気の高かったラクスが、これによって英雄を超えた偶像として認識されたであろうことは想像に難くなく、戦後行方をくらましたこともあって人々から盲目的なまでの信頼を勝ち得たのではないでしょうか。
 だからこそ、デュランダル議長は自分の政治の駒として、ラクスの贋者を造り上げ、活用した訳です。

・では、そうした彼女を動かすものとは一体なんでしょう。無論、こうしたラクスの思想信条の核となる部分に、父・シーゲルの教えがあることは言うまでもないでしょう。
 シーゲル・クラインはナチュラルとコ-ディネイターの融和にこそ未来がある、と考えていた人物であるようで、だからこそ強硬派のパトリック・ザラとは古い友人でありながら対立していた訳です。
 しかしながら、ラクスの考えというのもそれ一辺倒ではなく、コーディネイター、ナチュラル関係なく排除すべきは排除する、という考えであるように思えます。無差別に核を撃つのであればナチュラルをも討ち、地球の大半を死に至らしめるというジェネシスを撃つならばコーディネイターでも容赦しない、という感じ。
 まあ、だからこその第三勢力なのでしょうが。ただ、ここで考えたいのが、第二世代のコーディネイターで、キラのようにナチュラルとともに暮らしたこともないラクスが何故、そういう思想を持つに至ったか、ということ。
 父・シーゲルの教えがそこまで頑迷であったとは思えませんが、プラントで生まれ育ったとするならそうした考えに至るのはかなり困難であると言わざるを得ません-イザークがいい例です。アスランが比較的ナチュラルに対して偏見を持っていないのは、幼い頃に月面都市で暮らしていたからでしょう。

・では何故、ラクスがそうしたコーディネイター故の偏見や蔑視から自由であるのか-本編で語られていない以上判りません。
 判らないのですが、或いはラクスもキラやアスラン同様ナチュラルと同じ街で生活したことがあるのかもしれません。そこで文化の多様さを知り、無数の美しいものと接した彼女だからこそ、歌姫と称されるだけの表現力を身に付けられた、というのは想像に過ぎるでしょうか。
 無論、ラクス特有の観察力と洞察力だけで偏見を脱し、シーゲルの思想を受け継いだ、と考えることも可能でしょうが、そんな頭でっかちではあそこまでプラント市民に愛される歌姫にはなれなかったと思いたい所です。

・さて、ラクスは「種運」の中では比較的長く、沈黙を守っていた人物です。他の継続キャラクターが多かれ少なかれ議長の有能さを表現する為に改変されたにも関わらず、彼女はそれを免れています。
 前回の「種」でもラクスは話の「落とし所」の一つだった訳ですが、「種運」ではそれが更に強化されているようにも思えます。
 ここで、他の掲示板に書き込んだ僕の発言を引用してみます。

>ま、下手な演出でラクスが正義に見えるのでダメ、という反論が目に浮かぶけど、子供向けを標榜しているから日本の政治的正しさを使っているからだろう?
 日本の政治的正しさを貴方の議論するつもりはありませんが、少なくともその代表的な手法として「事前の根回しで手打ち」というものがあるのは確かでしょう。
 そして、ラクスの一連の行動はそれとは全くかけ離れているものです。地下組織でレジスタンスをしたり、来るべき時に備えて独自の戦力を保有したり。
 交渉の余地は持ち合わせても、敵対する相手に対して一歩も退いたりはしません。
 あと、「ラクスが正義に見える」んではなく、ラクスは言うなれば〇〇〇・〇クンのように物事が収束してから-もしくは、制作サイドの落とし所として-後出しジャンケンをするように定められている人なだけです。
 特に今回は議長の有能さを演出する為にアスランやカガリなど、様々なキャラクターが無能な人間として貶められていますが、ラクスは唯一それを蒙っていないキャラクターです。
 だからこそ、物語の「落とし所」足りえるのですがね。

 まあ、こういう問題が出て来るのも、「種」や「種運」が戦争アニメにおける「政治の役割」と「ヒーローサイドの英雄的活躍」というものの融和に試み、見事玉砕した-或いはしつつある-からなのでしょう。「機動戦士ガンダム」がリアルっぽさを獲得出来たのは、この相反する二つの命題を巧みに分離することに成功したことも要因の一つだと思います。
 それはさておき、「種」や「種運」の主役サイドの政治を一手に引き受けてしまっているラクスですが、であるが故に物語の矛盾を引き受けてしまっているようにも見えます。そしてそれを解消せねばならないが為に、彼女には前述の「後出しジャンケン」が宿命付けられているのかもしれません。
 こうしたことがあまりいいことではないと思うので、もしこの先「映画化」や「第三作」が作られるとするなら、制作サイドにはもう少しうまくやって欲しいと切に願います。

・当初は天然な歌姫でしかなかった筈のラクスが、間を置いて再登場した時には完全な政治家的キャラクターになってしまったことに困惑を隠せなかった人も多いのではないかと思います。
 確かに、プラントのコーディネイター社会での偶像、という意味では確かにラクスは初登場の時から政治的ではありました。だが、それは果たして後半の劇的なまでの転回を意識してのものだったかどうかは、個人的には疑問です。
 無論、一年間も物語は長丁場であり、その期間の間で余儀なくされるかもしれない軌道修正の為に予め幅のある作りにしていた-ということもあるのかもしれません。実際、ラクスではないものの、そういう話はまことしやかに流れているらしいです。
 
・で、結局何が言いたいのかというと、ラクスは「種」や「種運」に内包される“御都合主義”の体現者になってしまっているのかな、ということです。
 逆に言えば、そうでもしなければ物語を決着させられないのかもしれませんが。だとすれば、これほど哀しいことはありません。

by shunichiro0083 | 2005-09-01 10:12


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