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shunichiro0083のアイのダメヲタ日記-感想と推測と妄想の終わらない円舞曲

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2004年 12月 02日

シン・アスカのこと

・結局、シン・アスカという主人公は戦争をも厭わない、という人物であるように思える。
 第1話のラストで「まだ、戦争がしたいのかよ!」という叫びはナチュラルとコーディネイターとの戦いを忌避しているのではなく、同じ軍の仲間を殺された怒りから発っせられていたもののようだ。
 つまり、シンは理不尽な暴力によって身内を殺されたオノコロ島での過去がトラウマとなっており、それが現在の彼を支配している行動原理ではないか、ということだ。だから、ガンダム(これも重要な要因)を強奪し、己の身内に対する殺戮と破壊を恣にしたファントムペインの三人に対してあれ程までに敵意を抱いたのだろう。
 ユニウスセブン落下阻止についても「当たり前だ!」と吐き捨てたのは、その行為が「逆シャア」で描かれたようなそれぞれの立場を超えた純粋な地球に対する敬愛の念などではなく、単に上官からの命令だったからだろう。それ以外にも、ナチュラルに対して弱みを見せられない、とかアスランを放っておけないとか様々な理由があったにせよ、死に行くであろう地上のナチュラルを案じてでないのだけは間違いない。
 それどころか、志を同じくする仲間であったかもしれない者‐サトー率いるテロリストをその手に掛けねばならなかったという理不尽に対する憤りもあったろう。一つ分岐が違っていたら、あの場でミネルバらと戦っていたのはシンだったのかもしれないのだ。

・無論、主人公たるシンがこうしたキャラクターであることは作劇上からの要請であり、それは取りも直さず「種運」が「種」の否定であることを意味している‐たとえ、導入部に限ってでも、だ。
 それにしても、これはシンが視聴者に対してヒール(悪役)であることを意味する。通常、我々の概念としては戦争は「悪」であり、あってはならないものである。しかしながら、現在の所「種運」では戦争を避けようとするカガリの行いは現実的意見(に見えるもの)によって冷笑され、アスラン以外には理解して貰えない。
 カガリの言っていることは理想論であるとは言え、政治家が掲げる目標としては決して間違ってはいないのである。にも関わらず、それが受け入れられず、それどころか莫迦にされるというのはあのC.E.という世界が狂気に陥っているからであろう。信じるに値する隣人はなく、それどころかいつ実力を行使してくるのか予想もつかない、緊張した世界。
 シンというキャラクターはそうした世界の象徴でもあるのだ。シンだけではない。ルナマリアやギル、ジブリールといった新しいキャラクターは程度の差こそあれ、皆、時代の狂気に染まっている。狂気の只中で正気を保とうとするカガリやアスランは浮き上がり、拒絶される。

 まだ、世界に。そして、シン・アスカに救いは、ない。

by shunichiro0083 | 2004-12-02 12:29


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