2008年 01月 18日

西暦2307年におけるエネルギー事情に関する一考察のこと

・さて、「00」も1クールを消化し、第1シーズンを折り返したことになる訳ですが、世界観も-当然とは言え-全てが描かれていることでもありません。
 という訳でで、ここでは西暦2307年におけるエネルギー事情と、それに関連する世界情勢なども絡めつつ、俯瞰的かつ肯定的に考えてみようかと思います。
 まあ、改めて言うまでもありませんが、「00」の情報と言うのは断片的で、それ故に視聴者側に統一見解が出来るまで公開されている訳ではありません。これから僕が書く内容と、全く逆の見解に至っている方もおられるでしょう。
 ですが、それでいいんですよ。別に僕の考えを貴方に押し付けようとしている訳でもないですし。僕はこう考えている-ただ、それだけのことでしかないのですから。

・さて、まず第一に考えてみたいのはアザディスタンら経済ブロックに参加せず、軌道EVの恩恵を被らない中東・中央アジア・アフリカ諸国はどうやってエネルギーを得ているのか、ということ。
 考えてみれば、これは不思議なことです。勿論、軌道EVの太陽光発電による電力供給を受けていないことによって、そうした国々は困窮に喘いでいる、ということがアザディスタンを筆頭に描かれているのですが。
 その上で、国連決議によって石油は禁輸措置が取られていることが本編で明言されていますし、化石燃料を使った場合にはそこで発生したのと同量のCO2の回収が義務付けられていることも「F」で明らかになりました。
 と、いうことは石炭を用いた火力発電も事実上不可能ということで、こうした国々に許されるのは水力や風力、地熱、温度差といった自然エネルギーを用いた発電と、化石燃料に依然しない原子力しかないということになります。
 これは余談ですが、実は原子力など化石燃料に頼らない発電方式も建設、運用、廃止、取り壊しから燃料生産、運搬などという部分まで含めれば、CO2の発生は免れない、という試算が一般的のようです(勿論、化石燃料を用いた場合に比べれば、桁は一つ小さくなるのですが)。

・そうした観点から考えるなら、数十兆円という莫大な予算と時間をかけて軌道EVを建設するくらいの世界的エネルギー問題ですから、建設に参加しなかった国々が代替手段を講じていないと考える方が不自然でしょう。
 そう考えるなら、軌道EVに参加しなかった-或るいは参加を拒否された-国々というのは、それなりの処置を採っていたものの、それが後年の世界情勢の変化によって深刻なエネルギー問題へと発展してしまった、ということではないかと思います。
 これが中東では太陽光発電紛争となり、地域全体の国力が低下し、困窮に瀕してしまっているのではないでしょうか。
 では、具体的に軌道EV非参加国が採った方策はと言うと、原子力発電の推進ではないかな、と。都合のいいことに、この非参加国の中には天然ウラン鉱床を抱えるカザフスタンやコンゴ(旧ザイール)、ニジェールという国があります。
 こうした国々が相互に核燃料に関する協定を結び、代替設備として原子力発電所を建設していったとしても不思議ではないと思います。国際社会とIAEA(あれば、ですが)がこれを黙認したのは、万が一軌道EVに障害が発生した時に対する予防線だったのでしょう(同様の理由で石油の輸出も決議こそ出されたものの、執行はされていなかったのではないかと推測します)。
 ですが無事、軌道EVが完成し、太陽光発電も問題なく行われることが判明すると核燃料の流通規制及び石油禁輸が強化、徹底され、これによって非参加国のエネルギー事情は悪化。特に中東諸国の反発は大きく、その結果、AEU及び人革連の武力介入を招いてしまった-これが太陽光発電紛争だったのではないかと思われます。

・こういう事情で非参加国のエネルギー事情は悪化の一途を辿り、これによって国内経済や市民生活も深刻なダメージを受けたのでしょう。中東諸国はこれに加えて、太陽光発電紛争に敗北したといいうことがより拍車をかけているのではないでしょうか。
 本編の描写で同じ非参加国でも、アフリカ諸国や中央アジアよりも中東地域の方がより混乱しているように見えるのは、前述の太陽光発電紛争には加わっておらず、それだけに国力の温存が可能だったということがあり。
 更には両地域はそれぞれウラン鉱床を保有する国家-カザフスタン、コンゴ(旧ザイール)、ニジェールがあるので、そうした国々が自国内で核燃料を消費して発電した電気を周辺国家に売却することでそれぞれの地域の電力が賄われ、中東までの深刻なエネルギー危機はないのではないかと推測します。
 尤も、中央アジアに隣接する人革連やアフリカ大陸赤道直下の飛び地に軌道EVを建設しているユニオンなどは、割り増しをつけて周辺の非同盟国家にも売電している可能性はありますが。
 この考えで行くと、逆に人革連とも、ユニオンとも隔たった中東というのはそうしたおこぼれにも預かれず、電力不足が解消されないということになります。意外とマリナ王女の外交訪問は失敗には終わったものの、こうしたことが背景にあるからこそ何とかなる、という目論見があったのかもしれません。

・第二の問題として挙げられるのは、軌道EV建設のコストですね。あまり試算などは行われていないようですが、読売新聞2006年1月21付夕刊の7頁によりますと、一年間世界中で武器の生産をやめ、それによって浮いたお金を投入すればおよそ30年で軌道EVは完成するのだそうです(東大工学部建築学科助手のアリニール・セルカンさん談-肩書きは当時のもの)。
 この金額が一体どのようなもので、どれくらいなのかははっきり分かりませんが「ストックホルム国際平和研究所/SIPRI 年鑑 2006」によれば、04年に世界の軍需兵器製造メーカー上位100社(兵器販売額基準)が生産し、国内外に向け販売した軍需兵器の総額は2680億ドル(約32兆4280億円)になるのだそうです。
 取り敢えず、暫定的にこれらのデータを採用しますと、32.5兆円を総建設費とし。建設期間30年で軌道EVは完成することになります。
 が、西暦2307年の軌道EVは大小二本のオービタルリングが付属しますので、これの分の建設費も必要になります。これがどのくらいになるかは不明ですが、十万km単位の直径ですので、取り敢えず軌道EVと同じ値段ということにしておきます。
 となると、両方足して65兆円が軌道EV一式の建設にかかる、ということになります(繰り返しますが、あくまで仮定のお話です)。ちなみに経産省の広報によりますと、100万kw出力の原発一基建設するのにかかる費用は約3000億円とのこと。
 で、ユニオンで考えて見ますと2007年現在、かの国の勢力範囲内に確認出来るのは37ヶ国ですから、仮に各国が平等に負担したとしますと一国につき約1兆7500億円の出資ということになります(本編の台詞に従い、50ヶ国とすると1兆3000億円)。
 これを50年の年賦で考えますと-この根拠はまず、軌道EVの建設で30年かかり、その後二本のオービタルリングの建設に20年としてます-、1年につき350億円の出資が必要とされることに(50ヶ国とすると260億円)。ま、実際には人口やらGNPやらで負担する割合は変わって来るとは思いますが。

・ここまでが軌道EV及びオービタルリング建設までに必要なお金ですが、この後は更に維持費が必要になるのは当たり前のことです。こうしたお金も各国からの分担で賄われるのは確実ですから、各国家連合が半永久的なエネルギーを獲得したとは言え、決して安い金額ではないのではないかと思われます。
 無論、太陽光発電はコストの問題だけでなく、地球温暖化防止という面においても重大な役割を持つのですから、単純に金額の多寡では決められません。その一方で「F」でのスパークの台詞を信じるなら、CO2を回収するよりも安いということになるのですが。
 こうした部分を併せて考えるなら、太陽光発電システムの傘下に入っている国々が石油を買う、というのは二重三重にお金を払うということになるので、これでは国庫の負担が増える一方です。
 そうした現実的な面からも、2307年時点で石油は燃料としては意味のない資源になってしまったということなのでしょう。一方、石油はプラスチックなど、高分子化合物の原料でもありますが、この分野においても生物由来のバイオプラスチックが実用化されており、この方面でも価値が急落してしまったということなのではないかと。
 石油を評して「虎の子」と評したのはマリナの侍女・シーリンですが、虎の子がその真価を発揮する時は軌道EVが残らず崩壊し、太陽光発電システムが意味を為さなくなる。つまり、地球全土が大混乱に陥る日までないのかもしれません。

・最後の問題としては、やはり国連が保有する太陽光発電システムとはなんなのか、ということを避けては通れないでしょう。
 これが本編で説明された軌道EVを主軸とする太陽光発電システムとは異なるものであることは以前、説明した通りです(http://taneunn.exblog.jp/7834447/#7834447_1)。
 しかしながら、本編中で繰り返し何度も受信アンテナ設備と言っていて、かつ、これが国連主導の事業であるということを鑑みるなら、やはり結論として国連は独自の太陽発電衛星を持ったということになるのでしょう。
 ただし、これはつい最近のことで、それもおそらくは2307年に運用が始まったということではないかと思われます。

・ではその理由ですが、国連は軌道EVのエネルギー供給権を持っていない国々に対し、受信アンテナを建設し電力を供給するということをあの時点まで行っていない、ということが本編の台詞から推測出来るからです。
 加えて、この建設事業はアザディスタン王国からの支援要請がきっかけだっただったことは明らかになっていますが、少なくとも中東においてはアザディスタンが最初であることに間違いないということもあるからです。
 ただ、前者についてははっきりと語られていないだけで他の地域での実績があるのかもしれませんが、それならばもっとはっきりと劇中で語られてもいいと思います。実際、CBは南アフリカの紛争には二度に渡って介入しているのですし。
 そうした部分から推測するなら、やはりアザディスタンでの受信アンテナ施設建設は国連の初の試みだったと解する方が自然なのではないかな、と愚考する次第です-まあ、本音を言えばそうした重要なパートなのだから、マリナが国連総会を訪れて支援要請を熱弁する、くらいのシーンはあっても良かったというか、あるべきだったのではないかと思いますが。

・ちなみに、現実世界の計画では太陽光発電衛星のコストについては100万kwの商用衛星を打ち上げた場合、建設費を1~2兆円で40年間運用し、1kw時当たりの発電コストを約8円に抑えることで原子力発電と充分競争出来るという試算が行われています。
 まあ、これでも軌道EVを建設するよりは随分安いのですが、2307年ではこれよりも破格の金額で太陽光発電衛星が建設出来る可能性が高いのです。そう、資材の打ち上げに軌道EVが使えるからです。
 何せ、軌道EVに関する試算の一つには静止衛星に1キロの荷物を持ち上げるコストは1/100にまで下がり、約130ドル=約14000円になるという結果もあるとか。加えて、発電衛星の組み立てそのものも軌道EVに付随するステーションで行えば、更に安くなる可能性もあります。
 単純計算で太陽光発電衛星の建設コストが1/100になるとするなら、上限の2兆円で計算しても200億円となり国連の年間予算約13億ドル=1417億円でも充分、賄える金額にまでなっていると考えられます。また、これに伴って1kw時辺りの発電コストも下がる訳で、軒並み経済情勢が悪化した非建設国にも重い負担を課すことなく、地域の安定が望めるようになるのでいいことずくめでしょう-何せ、自前で原発を建てるよりも安いのですから。

・この件で一つ心配があるとすれば、ユニオンら大国の思惑で小国への援助に横槍を入れられる、というものがあります。国連の計画が成功すれば、相対的にそうした地域への影響力が低下してしまうからです。
 しかしながら、あくまでも国連の影響下ということであるなら、安保理や総会を通じて間接的にせよ今後も影響力が確保出来る。更には、国連の援助と言うことで公式に内政干渉まがいの要求も出せるようになる、という皮算用が大国の間で働いたとしても不思議ではないでしょう。
 もっと穿った考え方をするなら、アレハンドロが語った通り、自分達の支配力が及ばない地域にCBの介入をさせない為に、ユニオンら国家連合が国連に働きかけてこうした援助を急遽行わせるように仕向けた、という可能性も否定出来ないでしょう-まあ、結果的には無駄だった訳ですが。
 もし、この国連のエネルギー援助が成功するのであれば、CBの武力介入なんぞよりもよっぽど紛争防止には効果的でしょうね。

・今回、参考にさせて頂いたリンク先は以下の通りです。有り難うございました。

※軌道EV建設にかかる費用 http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/~yoshino/Orbit/Orbit.htm

※軍需兵器の総額 http://www.chosunonline.com/article/20070527000025

※経産省の原子力政策に関する広報 http://promotion.yahoo.co.jp/charger/200705/contents07/theme07.php

※JAXAの太陽光発電に関する記事 http://www.nikkei-bookdirect.com/science/topics/bn0702_1.html
[PR]

by shunichiro0083 | 2008-01-18 20:51 | 設定「00」


<< #15 折れた翼      #14 決意の朝 >>