2007年 12月 23日

#12 教義の果て

・いや、もう、ばっちり世界三大宗教の一つの似姿が登場してしまいました。それもどうなのよ、と思ってしまうのですが。
 まあ、そういう意味では「00」というのは「機動戦士ガンダム(以下、「ガンダム」)」とは本当に真逆の方法論を採ったというのがよく分かります。
 「ガンダム」というのはそうした国家間の問題や、実在する宗教といったわずらわしいものを取っ払い、普遍的な人間と戦争をドラマとして見せる為に敢えて未来の世界を舞台とした訳です-逆にロボットが戦う世界にリアリティを持ち込んだ、でもいいのでしょうが。
 しかしながら、「00」はリアルであることを強調すると同時に、現代性を視聴者に強く感じさせる為に舞台を西暦のままにした、という選択肢を選んだ訳で。
 勿論、この判断の成否は「00」という物語がきちんと完結するまではつかない訳ですが、少なくとも今回までを見る限りはあんまり意味のないものになってしまっていると言わざるを得ないような…そんな気がしてなりません。



・で、中東の西暦2307年現在の情勢がナレーションで語られる訳ですが、正直、説得力のないものを丸飲みせねばならないのはつらいことです。
 太陽光発電システムの実用化によって石油が無意味なものになり、その結果中東諸国の国際社会における価値が失われようとしていた、というのは誇張も含めてありだとは思います。
 しかし、その流れの中で国連決議で石油の禁輸措置が採択された、というのは話が飛躍しすぎでしょう。太陽光発電が肩代わりできるのは不動産の電力だけで、船や飛行機といった動産の動力まで肩代わり出来る訳ではありますまい。
 確かにフラッグなどは水素を燃料としたプラズマジェットエンジンを搭載しているとのことですが、同様に水素エンジンが普及しているのか、といった部分が見えないとここまで中東諸国が没落したという説明にはなっていないのではないかな、と思うのです。
 どうせナレーションで済ませてしまうのならば、そうした部分にまで言及すべきなんではないかと僕は考えます。若しくは、そこまで踏み込めないなら説明ももっと簡素化すべきだったんじゃないでしょうか、とも。

・っていうか、今回のナレーションだと化石燃料の枯渇したから軌道EVを建設した、という大前提が引っくり返ってるんですよね。少なくとも、軌道EV建設が計画された時点での中東諸国にはまだ石油を供給することが出来た訳ですから。
 にも関わらず、国連は大規模な石油流通を禁止した訳で。これはもう、明らかな内政干渉ですから、中東諸国が反発したのも無理はないでしょう。しかし、中東諸国はどこに対して武力を行使したというんでしょうね。まさか、北米大陸やヨーロッパ諸国に対して宣戦布告した、とでもいうのでしょうか。
 確かにそんなことをすれば国力が疲弊するのは無理もないとは思いますが、けどそれってリアルではないとも思います。「00」が現代社会に対するアンチテーゼだ、という思想があるのなら仕方がないのかもしれませんが、こうしたマイナス面を抱えているということは見落とされていたのでしょうか。

・しかし、超保守派っていうのはどうなんでしょう。あと、皇女に「即位」とか。もう少し言葉の一つ一つを吟味して使って欲しいと思います。

・ユニオンの派兵はどう見ても、出張って来るであろうCB-ガンダムの情報収集が目的で、アザディスタンの秩序維持とか国連団の安全確保とかいうのは建前でしかないんでしょうね。
 その一方、ラフマディー師を拉致監禁しているのは第三勢力の可能性もあるとヴェーダは指摘していたようですが、これはPMCのアリーが登場していることである程度の裏づけがされたと見るべきでしょうね。
 ただ、分からないのはその目的です。営利企業であるPMCが何故、アザディスタンで暗躍しているのか。少なくとも、これに利益が伴わなければ動かないでしょうし-意外と、ユニオンの軍上層部からの依頼で工作を行っていたのかもしれませんが、現段階では不明としか言いようがありません。
 武力併合されたクルジス人とアザディスタン人は国教の教義の解釈の違いから険悪だ、ということらしいので、クルジス人独立派がPMCを雇ってラフマディー師を襲わせた、という可能性も否定出来ないかも。

・で、相変わらず名のあるパイロットと一対一になると弱いガンダムマイスター、というのは変わらず。この図式が意図的だ、というのであればマイスターはMSパイロットとしての資質や実力といったものではない理由で選ばれているのでしょうね。
 実際、アレハンドロの台詞でも刹那が自らの技量ではなく、ガンダムの性能によって勝利していることが示唆されてしまいましたし。
 ただ、そうなると今回、デュナメスの高出力ビームは躱され、連射の利くビーム弾が防御されてしまうという絵は既にガンダムの性能が圧倒的ではない、ということを表してしまいました。っていうか、早いなあ。
 まあ、これがガンダムの性能がパイロットの技量のが足らない為に十全に発揮されておらず、彼らが成長すれば解決する、ということならそれもいいとは思います。が、監督の口ぶりではどうもそういうものでもないッポイですし。
 ならばあとは安易に強化パーツとかをつけてOK、という方向に行かないことを祈るだけです-しかし、これでクリスマス商戦は大丈夫なんでしょうか。これではガンダムを格好良い、と視聴者が思ってくれないのではないか、という気がしてならないんですが。

・クーデターの描写もリアリティを増す為か時系列を追う形になっている関係で、非常に分かり辛くなってます。正直、今回だけを見た限りではクーデターが終わったのか、続いているのかもピンと来なかったですし。
 勿論、簡略化した図式で見せるのはリアルではない、ということなのかもしれませんが、だとするとその手法できちんと見せるのは至難の技なのではないかな、と思います。
 一連の動きがだらだらと続いている所為か。若しくは、スポットがガンダムに振り分けられてしまっている所為か分かりませんが、必要以上に流動的なんですよね。こういう時にこそ戦術予報士という肩書きのスメラギを使い、ある程度の情報を整理するという見せ方が必要なんではないでしょうか。
 或るいは、王留美とかアレハンドロにそうした役割を担わせるとか。まあ、最後のシーンの台詞からするとクーデターは沈静化の方向にある、というだけらしいのでまだ終わっていないとは思いますが。

・しかし、「00」におけるガンダムの意味とか存在理由が提示されていないのに「俺はガンダムだ」とか「俺はガンダムになれない」とか言われても全然、ピンと来ないんですよね。
 ひょっとしたらいいシ-ンなのかもしれないし、後から見直せば腑に落ちるのかもしれない。けど、現段階ではまったく説得力のない台詞で当該回を締め括られてもなあ、とか思ってしまいます。
 確かに全体の構成というのは大事だとは思いますが、だからと言って一話一話が疎かになるというのもどうかと。理想論でしかないのかもしれませんが、それぞれの回を盛り上げつつ、それでいて全体の流れのダイナミズムも損なわないという構成であって欲しいなあ、と一視聴者としては願わずにはいられません。
 などと言いつつ、今回の「俺はガンダムになれない」という台詞を解釈するなら「俺は無力だ」というニュアンスになるのではないかな、と。刹那にとってガンダムが圧倒的な力の象徴であるとするなら、ですが。
 けど、CBって戦争行為にしか興味がなくて、それによって巻き込まれる民衆への配慮とかは元々ないですから。そういう意味で、内乱に巻き込まれて死んでいった人々を見て無力感に捉われる、というのはちょっと違うんではないかなあ、とも思います。
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by shunichiro0083 | 2007-12-23 10:37 | 感想「00」


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