2005年 04月 22日

それでは、どういう展開が理想的だったか考えてみるのこと その参

・一月ほど間が空きましたが、これで最後です。
 もう、前の内容なんか忘れちゃったよ、という方は脇のカテゴリーで「妄想」を選んでいただくと、すぐ出てきますのでお試し下さい。



・ザフトとブルーコスモス・ロゴス軍の決戦はザフトの勝利に終わり、プラントは戦勝国の権利と称して旧連合首脳国-大西洋連邦・ユーラシア連邦・東アジア共和国への駐留を開始。これら三国の軍備を解体し、多くのMSや戦艦を接収した。これによってザフトは先の戦いで消耗した軍事力の70%を回復することに成功する。
 こうした一方的且つ強引なプラントのやり方に地球連盟は厳重抗議を申し入れたが、プラント側は積極的自衛権の正当な行使であると突っぱね、ナチュラルとコーディネイター間の不穏な空気は払拭されないままとなっていた。
 そんな中、新たなプラント国防委員長-実質的なザフト最高指揮官-にレオン・ノークロル(Reon・Nokerol)が就任する。それは豊かに波打つ金色の髪と、美しく整った貌に真一文字の傷が特徴的な壮年男性であり、デュランダル議長の盟友でもあるらしかった。レオンは同時に増強されたF.A.I.T.H.統括にも就任し、ミネルバは当然その指揮下へと入る事となる。レオンは常に三人の少年少女を己の側近として置いており、彼らは仮面で素顔を隠したままF.A.I.T.H.各員に指示を出していた。
 この時期、アークエンジェル・エターナル・クサナギの三艦はカガリの使者として地球各国を東奔西走していたが、それはナチュラル-コーディネイター間の二度の大規模戦争を終結させるに大きな役割を果たしたと言うことから、双方から立場を超えた平和の船として認識されていたからである。
 キラらがこのような状況では自由に動けるのはミネルバだけであったが、レオンの指揮に組み入れられた事で行動の自由は制限されてしまう事となった。

・そうした中、デュランダル議長は地球の全ナチュラル国家に対し、ある声明文を通告した。それは地上に住む全てのナチュラルに対し、コーディネイター処置を施す、という驚愕の内容であった。
 あまり知られてはいないが、デュランダル議長は遺伝子工学の碩学であり、多忙な公務の合間を縫って極秘の研究は進められていたのだ。その研究とは、ナチュラル成体に対して薬物によって高度の遺伝子操作を行い、後天的コーディネイターとする、というものだったのである。
 議長は言う-お互いが異なる存在だからこそ、コーディネイターとナチュラルは相容れず、争うこととなる。戦争も終わらない。ならば、人類が全て単一の存在-コーディネイターになればいい。そうすれば人種的優劣を論ずることも、争うこともなく、ヒトは更なる高みへと向かえる筈である、と。
 そして、この通告を受け入れられぬ者には速やかな死を与える、とも。議長はかって猛威を揮ったS2型インフルエンザを改良した細菌兵器・S3型インフルエンザを開発しており、これはナチュラルのみを選択的に殺傷する恐るべきものであった。これは既にFAITHの手によって地上に設置されており、装置が発動すればウイルスは約12時間で世界を覆いつくし、ナチュラルを死滅させるのであった。事実、S3型インフルエンザに罹患したブルーコスモスの捕虜が数日のうちに死亡する映像も流され、人々はデュランダル議長のこの通告が単なる脅しではないこと思い知らされていた。

・ナチュラルに与えられた猶予は72時間-たったの三日間しかなかった。各国首脳は連合、連盟関係なくオーブに集まり、対応を協議した。だが、全ナチュラルの運命を決するであろうこの事態への対応がおいそれと決まる筈もなく。各国はカガリが提案した全権特使をデュランダル議長に対し派遣する案を、全会一致で了承した。
 全権大使として選ばれたのはコーディネイターにしてカガリの実弟たるキラ・ヤマトであり、その補佐としてトダカ一佐とバルトフェルドが就いた。本来ならばこの役目はラクスにこそ相応しいとキラは考えていたが、彼女は独自で動きたいとして辞退していたのだ。
 アークエンジェルに乗ってポイントL5に急ぐキラらであったが、プラントはこの訪問を拒絶。一時はミネルバとアークエンジェルが睨み合う、一触即発の空気が漂った。しかしながら、ラクスがデュランダル議長に送った電文によりプラントは一転、アークエンジェルの入国を許可する。
 プラントに入ったキラ達が見たものは、必ずしもデュランダルの今回の政策をプラント市民全員が歓迎している訳ではない、ということだった。ナチュラルに対する優位性が失われることを恐れる者・互いに戦ったという過去を忘れられぬ者-そうした差別的意識持つ者がいる一方で、ナチュラルという種そのものに対して敬意を抱いている人間や、形式だけ同じにした所で争いがなくなる訳ではない、と理性的な主張をする者もいた。
 だが、そうした声は少数派であり、プラント全体の空気としては偉大な指導者であるデュランダル議長の意見だから正しいだろう、というものが圧倒的世論であった。無論、そうした世論の誘導にミーア・キャンベルが一役買った事は言うまでもない-議長がラクスからの電文によって態度を軟化させたのも、そういう理由に拠る。

・キラらとの会談に応じたデュランダルであったが、その議論は全くの平行線であった。デュランダルは自分が望むものは完全なる平和であり、その為にも戦争を一部の特権階級の手から取り戻すことが必要だったのだと。
 別に、全てのナチュラルがコーディネイターになったからと言って、プラントの支配下に置かれる訳ではない。それぞれの国はそのまま、それぞれ独立した国家としてやって行けばいい。だが、優れた知力を持つコーディネイター同士ならば理性的に話し合い、無用な戦いは避けられるに違いないだろう。
 結果として、ヒトという種は永続的な平和を手に入れられる筈である-それがデュランダルが描く理想的な社会であった。
 だが、キラは問う。ならば何故、三年前のあの時、あくまでナチュラルとの和平を望んだクライン議長はその職を追われ、一方的に反体制派として断罪されねばならなかったのか。何故、ザラ議長は副官に撃たれねばならなかったのか、と。
 デュランダルは答える。それはナチュラルに責がある。ナチュラルがコーディネイターを差別し、抑圧し、虐殺するようなことがなかったらあのようなことにはならなかった。あれは言うなれば特殊な例であり、一般的なものではない、と。そうしたことを引き合いに出し、普遍的な喩えにすることには正直、疑問である、とも。
 重ねてキラは言う。如何にロゴスに手引きされたとは言え、デュランダル議長の穏健路線を由とせず、ユニウスセブンを地上に落着させようと企んだサトー一派は何故あのような惨劇を実行したのか。それは、同じ種であるということは、お互いを盲目的に信じ合えるということとは違うことなのではないのか、と。
 更にデュランダルは答える。それも特殊な例でしかない。あの忌まわしい事件が起きたのも、元を糺せばナチュラルによるコーディネイター迫害の歴史からである。今、プラントの世論が割れているのも、ナチュラルという種が存在するからである。全ての人類がコーディネイターになったなら、そうした混乱は全て解消されるだろう。だから、ナチュラルは須くコーディネイターにならねばならない。
 そうでないのなら、この地球と宇宙に無用な混乱を招く存在として、ナチュラルは抹消されねばならないのだ、とも。そう、静かに語るデュランダルの双眸に冷たく底光る何かを見たキラは確かに恐怖した。デュランダルは感情すら己の思索の道具とし、思考するのだと。

・会談の経過と結果-デュランダルの翻意は不可能であることをカガリに連絡したキラであったが、同時に一部のタカ派が会談の結果を待たずに暴走し、プラントへの進軍を開始したことを知る。
 話し合いでは埒が明かないならば、直接武力によって今回の通告を撤回させようというのだ。これを知ったキラ達は急いで地球へと向かったが時既に遅く、レオン率いるF.A.I.T.H.MS部隊によってタカ派部隊は壊滅してしまっていた。
 キラはレオンに抗議するがレオンは意に介さず、積極的自衛権を行使したに過ぎないと嘯く。結局、この戦闘を口実にプラントは閉鎖され、議長との再度の会談を望んだキラであったがそれが叶えられることはなかった。
 失意に沈むキラの元に、ラクスからの連絡が入る。これから出来るだけのことをする。だから、キラは自分を護って欲しい、と。
 ラクスはエターナルから、プラント市民に呼びかけた。全てのヒトがコーディネイターになったとしても、世界から争いが絶えることない。それは三年前、ザラ議長と意見を異にした自分の父が濡れ衣を着せられ、無惨に殺されたことが証明している。
 また、国策に反する者は罪人となり、追われるのならばそれが再び起こりえないと誰が断言出来るのか。コーディネイターは全知全能ではないのだから。身体的にナチュラルよりも優れているだけなのであり、心性においてナチュラルに優る訳ではないのである。心は、ナチュラルもコーディネイターも同じなのである、と。
 だから、全人類がコーディネイターになれば平和な世界になるなどと言う幻想は捨て、過去を許し合い、コーディネイターはナチュラルと協調して生きて行く道を道を今こそ選ばなければならないのです-ラクスはそう語りかけた。それは単にプラント市民に向けたメッセージではなく、地上にも配信された、種を超えた平和を希求する誠実な言葉であった。

・この言葉に逸早く答えたのはカガリではなく、なんとザフト・イザーク隊のディアッカであった。彼は言った。自分はナチュラルの女性を愛している、と。彼女は確かに身体能力的には劣るが、その心の豊かさにおいてはコーディネイターに優る。何故なら、彼女の大切な人を戦死させたザフトの一員である自分に対する憎しみを乗り越え、個人として認めてくれたのだから・・・。
 だから、解って欲しい。ヒトが互いに憎しみ合い、争い合うのは種が違うだからだけではないことを。お互いに対する無理解こそが、憎悪の連鎖を生み出すのだと言うことを。それを乗り越えられなければ、たとえ世界がコーディネイターだけになったとしても争いは絶えないのだ、と。
 この言葉に勇気付けられ、カガリも叫ぶ。我々はもう、コーディネイターと諍いはしない。乗り越えねばならない壁も、埋めねばならない溝も大きく深いだろうが、だからと言って諦めたりはしない。かっての差別を反省し、二度もの戦争を起こしてしまった原因から目を背けず、反省と謝罪を続け、後世の人々に罪深い歴史を受け継いで行く。
 それこそが、かっての自分達の過ちを清算することであり、我々ナチュラル全体がコーディネイターの方々に対し背負わねばならない責任なのだ、と。
 無論、今回のこの議長の申し入れは国民の意志を確かめずに受け入れる事は出来ない。しかし、この処置によってコーディネイターになろうという人々を拒絶したりもしない。それは一人一人が考え、結論を出すものなのだから。
 しかし、私はこのままコーディネイターにはならず、ナチュラルとしてやって行く。それは、それがナチュラルとして生まれた私が、ナチュラルが犯した罪を清算する為に必要不可欠なことだと思うから。コーディネイターになって、ナチュラルが負わねばならぬ責任を有耶無耶にする訳にはいかないだろうから。
 私はナチュラルとして生まれ、コーディネイター達と生き、ナチュラル・コーディネイター双方の為に死のう。それがこの忌まわしい過去に対する、誠実な生き方であると信じて-。

・ラクス、ディアッカ、カガリ-三者三様の言葉ではあったが、それは確かにナチュラル、コーディネイター双方の市民に影響を与えた。言葉や立場は違えども、その意味する所は同じ-互いの罪を認め合い、許し、尊重し合って共存共栄していくことだったからである。
 偽ラクス-ミーアによるプロパガンダも功を奏さず、かえってデュランダル議長への疑念を植えつける結果となった。ラクスの言葉を否定することは、取りも直さず差別主義者としての発言となり、これまでのデュランダル議長の行いを否定することになってしまうからである。
 こうして世論を受けて開催された緊急最高評議会でデュランダル議長が出した先の声明は賛成2、反対10の圧倒的多数によって否決され、これを不服とした議長はレオンに促されるようにして退席した。ひとまず、ナチュラル滅亡の危機は去ったのである。
 しかし、レオン直属の新規F.A.I.T.H.隊員によって取り付けられた地上の細菌兵器はその位置が摑めず、彼らがデュランダル議長とともに行方を晦ました今となってはデータも破棄されており、以前地上の細菌兵器の恐怖に晒されていた。
 プラント、連盟各国の懸命の捜査にも関わらず細菌兵器は見付からず、また、レオン以下F.A.I.T.H.隊員や自派の兵士を連れて失踪したデュランダル元議長の捜索も芳しくはなかった。デュランダルは失踪の際、大量のMSや戦艦を強奪しており、その中にはゴンドワナ級超大型宇宙空母2番艦・パンゲアやニュートロン・スタンピーダー艦戦隊も含まれていた。
 だが、そんな或る日、ユーラシア連邦ガルナハン自治区において深刻な疫病が発生し、地区の人々の実に95%が病死すると言う大事件が発生した。現場から検出されたウイルスを調べた結果、問題のS3型インフルエンザであることが突き止められた。
 その頃、時を同じくして姿を晦ましていたデュランダルから犯行声明が発せられた。曰く、これは警告である。全ナチュラルがコーディネイターとなることを選ばないのなら、こうしてS3型インフルエンザは猛威を揮い続けるだろう。この死の恐怖から逃れたいのであるなら、コーディネイターになるしかないのだ、と。
 更には、プラントがこの言葉に従えないのなら、コーディネイターの強靭な免疫力を持ってしても対抗し得ぬS4型インフルエンザによって死に絶えるであろうと。その言葉通り、デュランダルはユニウスファイブに仕掛けた細菌爆弾を作動させ、14万5248人のコーディネイターを病死させたのであった。
 人々は、このデュランダルの行為に恐怖した。

 続く
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by shunichiro0083 | 2005-04-22 14:22 | 妄想


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