2004年 12月 20日

PHASE‐10 父の呪縛

・今回、アバンタイトルは前回の戦闘のダイジェストに加え、それを地上から見上げるキラとラクス。個人的には単にキラが夜空に輝いたそれを核の炎と看破しただけではなく、その光景から何を思ったのかを見せて欲しかったな、と。プラントが破壊されたと思ったのか。それとも迎撃されたのを見抜いていたのか、とか。
 別にね、言葉にしなくてもいい。まあ、個人的にはラクスと子どもの会話を入れるくらいなら、それについて会話させて欲しかったけれど。それが適わないなら、せめてキラに一筋の涙を流させてやって欲しかった。クルーゼを回想させるのではなく。

・今回の一件に対するギルの政治的な考え‐アスランに語ったことは正しい。ここで提示されるのは、少なくともアスランに対してはギルがカガリ同様理想と現実の狭間で苦悩しているという姿を見せた、という事実である。ギルはプラント最高評議会の議長であり、事実上全コーディネイターの行く末を左右する存在なのだから。
 そこで彼が示すのはおそらくはカガリよりも思索し、本音と建前を巧みに使い分けることで多くのシンパとブレーンを有している、ということだ。そうでなくては、あんなラクスの偽物に演説をさせたりはしないだろう。それをするには画面に見えるミーアのお付きの二人だけでなく、もっと多くのスタッフが必要だからである。
 ギルについては疑いはじめればキリがない。セイバーをアスランに譲渡する件にせよ、彼はアスラン‐或いはアレックス‐をザフトの所属に出来ると言外に仄めかしている。それは単なる議長特権では無理だろう。何せ、巨費を投じて造られたザフトの最新鋭MSなのだから。そこで穿った見方をするなら、ギルはザフトの上層部‐上級指揮官層にも単に議長としてだけではない影響力を持っていると推測されるのだが。

・一方、苦悩するアスランに対してギルが語ったのも真実である。アスランは父・ザラの残した負の遺産までも背負い込もうとしている。まるでそれが、自分の運命であるかのように。
 それに対してギルが語る言葉は優しく、正しい。父と子はあくまで別の人格であり、父の犯した罪を子が負うことない。また、発せられた時から言葉は独り歩きを始めるということも。全て真実だろう。
 だが、パトリックの行動を断罪するアスランに対し、ギルはパトリックの行為を半ば肯定する。パトリックなりに、コーディネイターのことを思ってしたことだったのだろう、と。恐らくそれは、アスランにとっては久し振りに聞く慰めの言葉だったに違いない。だが、それは仮にも一国の指導者たる身で口にする言葉だったかどうか。自衛の為の戦いならばまだしも、敵国に侵攻してしまったら、それは侵略戦争という口実を敵に与えてしまうのではないだろうか。
 そういうことを主導していた人間を、ああいう形で評価してしまうことに引っかかりを感じざるを得ない。しかも極秘裏とは言え、オーブの特使としてやって来ているアスランの前で言うべきことだったろうか。けれど、そうすることでアスランに、自分も同じ十字架を背負う仲間なのだと、言葉巧みに語りかける。そうしたところを加味して行くと、やっぱり今回のこの台詞やセイバーの譲渡にも何らかの裏があるのではないか、と勘繰らざるを得なくなってしまう。

・机に拳を打ち付けるカガリと、壁に拳をぶつけるシン‐この二人の抱く感情はどうなんでしょう。同じものなのか。それとも、似て非なるものなのか。多分、カガリはネチュラルとか、コーディネイターとかではなく、単純に悲劇を繰り返そうとする両陣営に怒り。シンはプラントに攻め入ったナチュラルに対して怒っているのではないかな、と。
 カガリの抱いた感情というのは、ユニウスセブン落着を招いたコーディネイターも込みであってではないかと、推測している。何故なら、それが今回の連合軍のプラント侵攻の直接のきっかけだから。カガリの中では前戦争というのは、ユニウス条約で完結しているから。
 けれど、シンは違う。シンの中ではまだ、戦争は終わってはいない。終わったとされていることを、受け入れていない。あれは‐父母や妹が死んでしまったのは仕方のなかったことなのだと、シンは思っていないのだ。
 勿論、歴史年表を見ればこのナチュラルとコーディネイターの迫害と対立のそもそもの原因がナチュラルにあるのは明白である。ナチュラルがいなければ、コーディネイターという存在がこの世に生まれ出ることはなかったのだから。
 だから、コーディネイターに対してナチュラルは支配者として君臨する理由があると言い。片や、最早コーディネイターは独立した一個の種であるという主張がぶつかり合い、悲劇が拡大再生産されていく世界。それがC.E.というものであることをカガリは肌で感じ取っているのだろうし、アスランは理解し、そしてシンは拒絶している。何故なら、それを是としてしまったら彼の想いは行き場をなくしてしまうからである。
 実はシンの考えは根っ子のところで彼が忌み嫌う、戦いを望む者と同じだから。シンは自ら暴力は振るわないが、歯向かう者には容赦しないという人物設定とも読み取れる。では、それが目に見える力ではなく、目に見えない悪意であった時、彼はどのように対応するのだろう。武力ではないが、陰謀術数によって自分が属する世界が深刻な危機に陥った時、シンはそれを実力で排除するに違いない。そしてその論理と行動こそ、程度の差こそあれ、今回地球連合が採った武力行使に至る道筋と同じなのである。
 だからこそ、シンはカガリを否定せねばならず、アスランの行動に異議を唱えねばならないのだ。

・更に踏み込んで言えば、今回の戦闘によってプラントの世論はナチュラル討つべし、に傾き始めている。主戦論が主流になっている、という言い方も出来るでしょう(プラカードには「リメンバー・ユニウスセブン」ですから)。平和を望む声も、その勢いの前には封殺されてします。
 そこへ現れたのがラクス・クラインことミーア・キャンベル。ラクスとして語る彼女の言葉によって民衆は沈静化し、ひとまず最悪の事態は避けられたようです。ギルとミーアの言葉を総合すると、ギルはこのような事態を予測してミーアを偽ラクスとして養成していた、ということになります。無論、ラクスのカリスマ性を自分の手駒として利用する為でしょう。
 今の所、その正体はクローンではなくそっくりさん、ということになっている様子です。ですが、果たしてどこまで本当なのかは疑問符が付くところ。そう言えば、歌は似ている、とは言っていても容姿が似ているとは言っていなかったような。
 果たして、ギルは本当に開戦を望む声を封じる為にミーアを必要としたのか。TV演説だけで済ます気があるのなら、既存の映像データからのサンプリングでも構わないのではないのか。ああいうタイミングでアスランと会い、食事を一緒にしているという描写からは偶然ではなく何者かの作為を感じてしまいます。
 
・ラストシーン。アスランはそう遠くない過去を回想します。そこで噛み締めるのは今の自分‐アレックスという存在の不確かさか。それとも思い、動きながらも現実には何も出来ないでいる、自分の不甲斐なさなのか。
 アスランは果たして、どのような選択をするのでしょう。

・次回予告によると、来週PHASE‐11ではザフトが地上に侵攻作戦を開始するようです(ザフトのMSが降下カプセル輸送艦に積み込まれてる様子が映ってました)。
 そうしたことから考えると、製作側は「種」がアバンタイトルとナレーションで済ませたものを本編でやっている、ということになります。さて、それが何を意味するのか。本編全体の中で、どれ程重要な位置を占めるのか。今はまだ分からず、推測するにもちょっと情報が少なすぎます。
 単純に前作との差別化、というだけでなければいいのですがね。

 満足度=☆☆/2★★★(1個半)
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by shunichiro0083 | 2004-12-20 14:08 | 感想


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